この世界を離れて ★/atsuchan69
今のいましがた思いつきましてな。さっそく声、かけさしてもろうた次第だす」
父ちゃんは顔つきをおとなしくし、
「親分さんですか。それはけっこうなお話をありがとうございます」
座ったままだったが、ひだりのこぶしと酒をのむ手をひっこめるとていねいにおじぎをした。
親分はかぶりをふった。
「いらんわ。かたくるしいのはきらいですわ。それよりも坊ちゃん、ええ顔しとるがな。とてもこの世のものとは思えんな。ところでにいさん。さて、この話どないでしゃろ?」
「せっかくですが。次の興行が決まっておりましてあいにくと、ここは泊めていただくだけの場所となります。なにとぞご理解のほどをお願いいたします」
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)