この世界を離れて ★/atsuchan69
う面でやってきて母ちゃんにご祝儀をわたした。母ちゃんはいつもとかわらず、まんめんの笑みでおじぎし祝儀を受けとったけど、父ちゃんのバイオリンは、とつぜん熱がこもりいつもとちがうメロディーをはじめた。それはジプシーの曲でこれは僕もまだ一度しか聞いていないすばらしい音楽だった。
村長は、
「今夜はうちに泊まりなさい」
と、じっと真顔になって母ちゃんに言った。
するとその夜は海と山の幸、そして見たこともない料理の数々と果物や菓子の山盛りだった。
ふかふかの寝床で母ちゃんは僕に言った、
「おまえ、オマンマ食うだけやったら、ずっとここにいてもええんやで」
「いやや」
「なんでや
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