この世界を離れて ★/atsuchan69
?」
「しらん。大切なのは、オマンマ食うて生きてゆくことや」
そして母ちゃんはかつらをかぶって別の女の人になった。
舞台にでた母ちゃんは、おひめさまになりきって父ちゃんの弾くバイオリンの伴奏にあわせておどりだす。客席がわいた。でもたぶん、いちばん見入ってるのは、この僕だった。
おなかがすいた日、母ちゃんは空を見上げて、
「あまい綿菓子みたいな雲がうかんでいるわ」
と言った。
「父ちゃん、ゆうべまた酒飲みにいって帰らへんやん」
「そうや。帰らへんな」
「はらへって死にそうやわ」
「平気や。一日くらい食わんでも死なへん。母ちゃん、七日も食べんときあったで」
「オマ
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