地獄の詩人/atsuchan69
 

パノラマに景色を見渡せば、
厳しい冬を目前に控えて
在ってある山々の命は紅葉し
茶焼けた一枚の枯葉にまじった
殺意にみちた鮮やかな色彩の
斑紋、そのざわめき

ゆっくりと露天風呂に浸かり、
世俗の出来事を何も知らぬまま
とつぜん山寺の鐘の音を耳にする
檜風呂に立ちのぼる、
湯煙のトワイライト・タイム
甚三紅 (じんざもみ)の寛ぎのひと時

と、同時に君の声――

 もうアガルわ!

浴衣に着替えて携帯が鳴った
躊躇いもなく、電話に出ると「ワン切り」
末尾〇六六六。
不吉であやしい着信番号が表示され、
どうにも嫌気が差したが、
その日、その時。

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