障子の影/佐々宝砂
 
めろめろと字の書かれた掛け軸が下がっている。右側には窓、ただし古ぼけて穴の開いた木製の雨戸が閉められている。天井には、これだけは近代的なごく当たり前の照明が皓々と光っている。そして正面にはまた閉ざされた障子、しかもそこには女の影が映っているんだ。

 あれっとは思ったが、後に引くのがイヤだった。ぼくは靴を脱いで部屋に上がりこみ、おざなりの挨拶をしながら障子を開けた。


 ところが、またそこは無人の部屋だったんだ。それも、前の部屋と同じような造りの三畳間だ。左側に床の間、右側に窓、皓々と明るい照明、正面には障子。床の間に飾ってあった掛け軸は違ったが、ほかはほとんど同じだ。障子に映った影ま
[次のページ]
戻る   Point(4)