障子の影/佐々宝砂
影まで同じだ。ぼくはなんだか馬鹿にされたような気がしてきた。長いあいだずうっと気にかけてきたのに、こんなのあるかという気がしてきた。それでどうしたかって? ぼくはもちろん、目の前にある障子を開けたのだ。
そこはまたもや無人の三畳間だった。前のふたつの部屋と同じ造りで、しかも、正面の障子には女の影が映っている。ぼくは小走りに障子に近づき、がらりと開けた。また同じ三畳間。ぼくは走りながら女の影が映った障子を開ける。また三畳間。無人。障子を開ける。誰もいない三畳間。障子を開ける。しつこいくらい三畳間。
どのくらい障子を開け続けただろう。ぼくは疲れて部屋の真ん中で立ち止まった。例の香を焚き
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