「 ナナメ。 」/PULL.
 
め、細い、通路を斜めになりながら座席に着くと、先客が、いた。先客は三名いて、彼らは皆、おなじぐらい傾いていた。すいません通してくださいと言うと、彼らは目を斜めにして、嫌そうな顔をした。視線を感じないようにしながら、斜めに、窓際の座席に座る。座席はゆるく傾いていて、体重を掛けるとなおゆるく、傾くのだった。背もたれに背中を預け、ゆっくりとひとつ息を吐き、目を閉じた。疲れていた。目を閉じても、彼らの七つの目が、斜めに、感じられた。
 ぎっ。中で音がして、胸の撥条がひとつ、解けた、臍の歯車が、ずれる、感じがした。かたく目を閉じ、さらにかたく目を閉じ、ふかい腹の奥で、祈った。この音がどうか外に漏れませんよ
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