いくつかの心象/結城 森士
 
歪む表情も
流されていった

赤い傘を差して
濡れた路上を歩いた
通りの風景はいつも
薄いガラスのように
儚くて頼りなかった

この雨には何処かで出会ったことのある
そんな確かな感情が突然、湧き上がった
だけどそれ以上は何も思い出すことはなかった
これ以上、薄いガラスの向こう側に
行ってはいけない気がする

僕の横をすり抜けて商店街を駆けていった
少女の面影を見つめていた








[真昼の幻影]

その日は熱くも寒くもない
ただ眩しすぎる午後だった
ゆらりと揺れて
少年の影が僕の身体をすり抜けて
公園の方へ駆けていった


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