いくつかの心象/結城 森士
 
定刻を刻む時計の針の音は
急かしているのか
笑っているのか

過去の写真は全て捨てた
破って捨てた
全ての美しい思い出は
屈辱と失望に変わってしまう

鐘の音が鳴り始めると
泣きながら耳をふさいだ
一日が終わっていくのが
どうしようもなく悲しかった
誰からも置いていかれたように思えて
暗い空洞の部屋で感情を失っていった

時計の針が鳴っている
あの頃の虚無の感情も
今では追憶の中にしまわれている
こんな風に、繊細な感傷を失っていくのだろうか









[雨]

弱々しい雨が窓に流れていった
そこに写っただろうか
弱々しく歪む
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