彼岸の雪/フユキヱリカ
ていく
昨晩降ったみぞれは
明け方には止むだろう
あなたのなみだが、
そらへ昇ったのだと気付く
彼岸の雪に
わたしは、
わたしをおわらせる
の、だろうか
と問う
俺の目の黒いうちは
この家は壊させないと
言う父と共に
家に縛られ家で果てる運命を
ひどく恨んだ
かわいた咳の音で目を覚ます
閉じた襖の向こうで
昔の家はさむいだろう
さ、火燵に入れと
父の声がした
窓をあければ
ゆるゆると
乳白の太陽が昇り
真冬の朝が
一番きれいだと
思ったのは本当で
それは
あなたが産まれた朝だからなのか
緩んだ陽射しは あなたのやさし
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