彼岸の雪/フユキヱリカ
さしさ
その時わたしは
はじめてゆるされた
おはよう、ねぼすけさん
戸の間から覗くちいさな顔に
おいで、と言う
わたしは姪に
カーディガンを着せた
気が付けば
ひとり火燵で新聞を広げる
厳格である
父の背もすっかりまるくなって
真っ白な庭をみて
三月なのにすごいね
東京の雪は灰色しかないのと
目をくりくりさせる
ねえさま、頬が赤いよと
凍えたわたしの顔を包む手に
北国の子どもは
生まれたときから
みんな真っ赤だとうそぶくと
それ、ほんとう?
と姪は嬉しそうにわらう
知っていた
それに良く似た
わたしを見つめ、
困ったようにわらう瞳を
そしてわたしは
わたしをかたる
ゆるされて、はじめて
鼻先を赤くしたまま
祈りを捧げた
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