火をつくる丘。/鯨 勇魚
だけを、
隠しながら生きています。
その中にあなたがいます。
「イサナ」と、
あたしは努めて、
感動をおさえながら聞いたの。
あなた、
時々ひどく寂しいと思うことは無いかい。
冬。濡れたように目が光るのが一瞬の。
小さい頃のように今。も、
ワッと抱きついてくるかと思われるのですが。
しかし次の瞬間には自身の気丈に返って、
(いいえ、ちっとも)
でも、だって。
(なあぜ。どうして?)
と微笑しながら聞きかえしたのは。ね、
(そうか。そうだよね)
その微笑、その涙で。
季節を渡り。踏み締めるから。
(それならいいんだよ)
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