花瓶の底、龍の眼(改稿)/はらだまさる
コアントローで綺麗にシコシコと磨いた手首を、くんくん、くんくん嗅いでみると、燐寸の火で 真っ黒に焦がした灰皿のうえの 最後の銀杏の焦げ目から、龍が一匹、俺の額を、ずばん、とぶち破って、経済観念の薄いコンドームみたいな脳膜に勢い良く、びくびく、飛び込んできたので、おお、とか思って、ハッカの飴玉を口一杯に頬張りながら、グラディウスよろしく、パピュンパピュン、パピュンつって、気持ちいい音で圧縮してさ、
結構、料理が得意なお前は、俺が撃ち殺したその龍を 年季の入った片手鍋で 色が変わるまで茹でてから、皮を剥いで 飾り頭は残して、後は「有次」の錆びた牛刀で、全部、薄切りにしてさ、ちょっと欠けた粉引き
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