そこら/捨て彦
平日
関西には大阪という名前の大きな猫がいて
背中に通天閣を生やしたり
わき腹に天王寺を縁取ったりして
とても猫とは思えないような奇声を発しながら
のそのそと同じところを行ったり来たりしている
昼間から飲み屋に入って酒をたらふく飲んでいると
見知らぬ隣のおっさんが
うしろにいる女を指差して
擬似的に 犬でありつつ 猫である
って酔い目でこっち見て詠うのだけど
その日以来
おっさんの
縦に動く喉仏が、ああ、頭から離れなくなって
ほんと
困っちゃうな修羅
平日
右の目が
瞼の裏あたりからさらに奥、
眼球の中心
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