虹と観覧車(短編)/宮市菜央
 
で塗りつぶされていて、白い空から赤い物体が浮かび上がる様はまるで何かが燃えているようだ。
そろそろ身支度を整えようとわたしは窓から顔を離して背を向けた。その瞬間、強烈な何かがわたしを襲った。ほんの一瞬、足元から頭の先へと電流のような痺れが駆け上がって、わたしは反射的に窓へと視線を戻した。窓の外では、雲の隙間から一筋の光が射し込み、それまで空を覆いつくしていた雲が信じられない速さで流れ去り、そこに巨大な二重の虹が現れた。それらがあまりにもすさまじいスピードで次々に起こったので、わたしはしばらく呆然となった。

「何を見てるんだ?」
唐突に背後から男の声がして、わたしは自分を取り戻した。「起き
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