いいから酔えよ、チナスキー/楢山孝介
 
洒落たカフェを借り切って開かれた
長い付き合いになる友人の結婚披露宴の席で
禁酒中のチナスキーは溜め息をついている
生ハムをかじっては水を飲む

祝辞を読んだ
新郎との付き合いの年数を数え間違えて
生まれる前に出会ったことになってしまった
それがジョークか呆けかわからない招待客たちは
笑いもせず
怒りもせず
新郎も苦笑いするだけだった
酒をやめてろれつはよく回るようになった
けれど出てくる言葉は空回り
多すぎる空振り
アウトの数はとっくに二十七を超えていた

初対面の新婦に気を使わせてしまった
参加者の男も女も
チナスキーに優しくしてくれた
そのことに怒りが
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