いいから酔えよ、チナスキー/楢山孝介
りが湧かなかったり
追い払うような元気がない自分を
チナスキーは受け入れた
青春なんて思春期が始まる前に終わっていた
酔いどれていた頃の記憶は日々消えていく
元々無かったのかもしれなかった
昔日のとげとげしい面影が消え
仲間からの祝福を顔に貼りつけた
新郎がチナスキーに近寄っていった
手にはウィスキーの壜が握られている
その顔に通り雨のような気づかいをよぎらせながら
チナスキーに壜を手渡した
キャップを開けて覗き込んだ水面に
チナスキーは酔いどれ詩人の姿を見た
酒を飲み続ける醜いあばた面の男が
酷い言葉しか使わずに恋人と口論をしたり
誰かを殴ろうとして逆に殴
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