ひぐらし/モーヌ。
 
それらは いなかった





からだも こころも ひびわれて しまい

ひぐらしは とおくへ 出かけなければ

聞かれないので この 2年

からっぽの ままに あった

ぼくは 川沿いの 郊外に 住んで いる

あたりに みどりは あれども

もう ひぐらしの 声は 聞かれなかった

ぼくの 内部の 森で 唄う ひぐらしの ほかは





かなかなかな

可奈可奈可奈...

ひとり 女の子の 名まえを ノック して いた

“ きみは どこに いるの? ”

そんな チェーホフの 小説に 似て いる

きみが 着ていた
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