ひぐらし/モーヌ。
いた 制服の
ブレザーの エンブレム には
hope faith love... と 刺繍されて いた
ことの葉も 想いも みな
すっかり 見失われて
それは ひとりから 誰でもない
名まえ への 推移を ひびいて
ぼうっと 明るんで いる
開かれた 古書の ページの 香る
カスタードクリームで 書かれた 文字の
むかし 未遂に 終わった 恋と 呼び声は
ひとつの 開花を 遂げながら ひびいて ゆく
かなかな 可奈
誰かのもので あったもの から
気づいた ひと みんなの ものへ
かつ 誰のものでも ない ひびきへ...
放り 出されて いた
こころは ふしぎに おだやかに
ようやく 小康を 得た ぼくは
ジャックの ように 旅立つ のだ
つくつくほうし すら はかなく 啼く ときに
ひぐらしに 間に合うの だろうか
もう 聞いて しまった 気も するし
そうでは ない 気も して いた
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