敗北者のうた/松本 卓也
 
に帰って
無駄に広い田んぼを耕してみるか
最近親父が葡萄作りに凝ってて
飲ませてもらった自家製酒
中々に美味かったな

ふっと 気づいた事がある
もう終わっているんだな

青臭い少年の頃に
夢とか自由とか言葉尻を愛して
どれだけ無駄を費やしたのか
戯れに指折り数えると
足が攣るから始末に悪い

小さかった輝きが放つ鈍い陽炎
誰にもならぬまま放たれた涙
時はただ平凡なまま尽きていく

簡単で平易な言葉で教えてくれまいか
与えられたつもりの生きる意味は
大仰に死ぬ為の準備じゃないとしたら
時計が刻むように揺れ動く終着で
何を見ることが出来るのかを


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