敗北者のうた/松本 卓也
 

誰しも無視の壁で隔たれるまま
今にも止まりそうな心臓に
脈動を与えてくれるような

背負う意味さえ失えるほど
どうしようもないほどのリアルを写し
見て見ぬ振りする傍観者の澄んだ瞳に
見ず知らずの光を突き刺してみたい

幻想に塗れる事の無い歌
薄っぺらな愛を嘆く絶望
空想想像妄想虚像を綯い交ぜにして
混濁した筆跡で書き殴られた石版は
何一つ底辺と交わらないまま分際を超える

もはやこの目に見えるのはいつも
分らない物を理解した気になる
手に負えない病状で中和された
うわ言に過ぎないじゃないか

空き缶を蹴飛ばすと
響きあう虚無に思い出す痛み
馴れ合い持ち合い委ね合い
全てが歪んで見えてくる

遠い過去を描いた夢でしか
微笑む事すらできないほど

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