ラニーニャ/松本 卓也
ているだけじゃないかな
通り過ぎる眩い影と軽薄な音は
決してこちら側を向いていない
後姿は遠ざかっていくだけで
振り返る事さえない
記録的猛暑を示す太陽は
鏡にさえその姿を映す事無く
ただ気色の悪い汗を滲ませるだけの
装置と代わり映えしないじゃないか
相応しい擬音語が見つからない
貧相な感性が呪わしくなってくる
体から抜け出した幾つもの影は
弾け飛んでは消えていく
今はただ息を止めていたいほど
暑苦しい義務や責任に打ちのめされながら
とうの昔見つけたはずの本当でさえ
意味の無いものだと思い知る
肩が重いのは仕事のせいだけじゃない
相応しい言葉
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