組詩「風」 /青の詩人
 
まいたかった
そして風はどこへも行かなくなった


世界から風がやんだ日 
少女の麦藁帽子は もう飛んでいかなくなった  


2.願い

風のない世界
つまらない世界

鳥が空を渡ることも
船が海をゆくことも
麦藁帽子が舞い上がり
少女の運命を変えることも
もうない世界

煙が揺れることも
花びらや綿毛が飛んでいくことも
異国へ出かけたあの若者の
噂話が老女に伝わることも
もうない世界

風のない世界
味気ない世界

誰もが願った 奇蹟を
風の名を知らぬままに
吹いてほしいと願った
鳥も船も少女も煙も花びらも綿毛も
古びた家にひとり
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