組詩「風」 /青の詩人
 
とり暮らす老女も
願った 風の訪れを
その姿さえ知らぬままに

だが風は吹かなかった
世界は動かなかった


風の願いは
消えたい
それだけだった






3.世界


だが風はどこかで覚えていた
はじめて空を飛んだ日のことを
体が軽くて ふわふわで
風を抱いたのは 柔らかな青の肌だった

そうだ
いつもそばには 
空がいてくれた
空だけが わたしを包む 
愛だった

あのひとにだけは
自分を見せても いいと思った
あのひとのためだけに 
もう一度 飛びたいと思った

空を飛ぶことを
空と溶け合うことを
願った
神様
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