『石の女』/川村 透
 
りほどくと声もなく目を閉じ
いやいやをするようにゆっくりと畳にくず折れてしまった
ばさり、
と舞う彼女の写真
僕は思わず宙を舞う写真の一枚を手にとり
ぎくり、
とその中に写る彼女の姿に釘付けになった。
撮ったばかりの振袖姿で横たわる彼女の、白い、写真
その瞳に変化が兆していたのだ、赤く白くもうそれは
そう、黄金の色に近い
ちりちりと糸を重機でこじ開けるようにゆっくりと
印画紙の中の彼女の瞳が開いてゆくのだ
僕は歓喜のあまり嗚咽をもらし輝く至福の予感にふるえながら

感じたんだ。

ひとつシャッターを切るたびに
つま先からゆっくりと着実に、彼女の永遠、が脈打ちながら
[次のページ]
戻る   Point(7)