『石の女』/川村 透
 
ていた。
彼女にいままでの写真をすべて見せ
この、不思議、と彼女の思い出せない過去のために
僕に何が出来るのか考えよう。
心が決まると、
僕は最後に撮った写真を二度と見る事ができないかもしれない、と
いとおしい振袖姿の眠り姫を
急いで印画紙に焼付けなければならないのだと、
暗室へと、急いだ。

写真の束を手に、もどってみると
眠り姫は目覚めていた。
僕は彼女を掻き抱き写真を見せ、

目覚めている時の、
彼女の姿が写真には写らないこと、
眠っている時にだけ彼女の姿が写ることを長々と言い訳がましく
説明したのだ、彼女は顔を背け、僕の腕を
静かにけれど断固として振りほ
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