『石の女』/川村 透
向け、こっそりと、シャッターを切り続ける
その音にうっすらと彼女の瞳が開く、黄金の
見たこともない輝きが薄闇にこぼれて僕はカメラをあわてて隠す
彼女の瞳はやがて瞼にしまいこまれ、嘘のように夜が帰ってきた
と、
甘く声を上げ目覚めることなく、寝返りをうつ眠り姫、
を尻目に眠れそうにない僕は暗室へと急ぎ現像にとりかかる
そして眠り姫の寝姿が何枚も何枚も何枚も何枚も
美しく印画紙を汚していることにぞくりと黒い歓喜を覚えたんだ
けれど、あの、瞳がよみがえる瞬間の輝きは撮れていなくて
最後の数枚は彼女の
姿が突如消え失せ空のベッドの陰影が刻まれているのだった。
目覚めている時の、
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