ある雨の日より/もも うさぎ
 
島の風と違って


あたしが住んでいたところは
海がとても近かったから
海から吹く空っ風で
いつも 吹き荒れて

あの日の海も
とっくに流されて


さよならを言ったことに
思ったより後から気づいたりする


幾重にも降る 雨の音を
頬杖をついて 目をつむる 午後












「かぜ」



あたしの飛ばした意識が
風に乗って行き着いたのは
太古の遺跡だった

空の隙間が
ほんの少し開いて
その意識を吸い取ってくれるのを
そこで待っているのだろう


(雨はまた上がったんだ)

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