アブラムシ/水町綜助
 
鉄のくずかごは一杯になり

溢れ出しそうになると除夜の鐘が鳴る

その間だけは日めくりのかわりに蜜柑の皮が捨てられる

清掃業者の青いトラックが遅れて来た

それは大きな歯のついた肛門を開け

地黒の肌の老人がそこに次から次へと餌を放り込んでゆく

朝の静かな町には咀嚼音湿っぽく響き

モーター音延々と

そうして再生紙にあたらしい毎日が印刷され

事務員は銀行員からあたらしい日めくりを受け取り

眠たげに壁に掛ける

それがずっと続いていくだろうという幻想

まどろむ眼(まなこ)

とたんに

ページを破って空から電車が降ってくる

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