アブラムシ/水町綜助
 


十両編成の銀色の電車

慌てふためく僕

まさかこんなことになるなんて思ってもみなかったから

僕はいままで部屋の片隅に

着古した服と一緒に放っておいた

僕の骨盤をいそいで探しだし

いつでも持ち歩けるように洗面所できれいに洗って

体のあるべき場所へ戻した

しかし僕のほかの骨はもうすっかり育ってしまって

うまく体に馴染んではくれなかった

僕はそれからずっと不安を感じて生きていかなければいけなくなったけど

それは仕方ないこととしてあきらめるよ

もちろんとても嫌だけど

思い出すたびに泣いてしまうだろうけど

黄緑のアブラムシがすり抜ける指と指の隙間

そこに曇り空を透かしてそう思う

多くをすくい上げられない

重く大きなものを持てない弱い指

食器を持てるだけが救いだよ

あと、こんなふうに窓を開けられることも

僕は曇り空見上げ

アブラムシ摘んで捨てた
























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