口誦さむべき一篇の詩とは何か/んなこたーない
 
ちんとそろっているだろう
誰かさんが註文する一生涯のように。
だがきみの
決断たるや
いいたくないが、どこにもない
そこにも心にもない
第一、ふぞろいでかたちをなさない。
人間の
決断は
二色刷りでさえないのかと
わが友カミキリムシは興味本位できいている。

成功した男なら決断をしまっておくだろう
ファイル・キャビネットに。
だが生はだれにも一度か二度は
決断をせまる――
逃げ切れやしない
タンブラーのように蒼白な深い谷だ。
溺れることこそわれわれの権利だ
そのもっとも長い瞬間こそもっとも衝撃
関わるものについに関わるじぶんの姿を
ドリルがつらぬく。

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