*浮き島/チグトセ
 
ように、できるのかい」
寺内が親指の爪を眺めて言った。
「愛なしで生きていくことができる?」
「解釈はしてみた」
僕はのっぺらぼうな声で喋った。一応、喋ってみた。言葉の意味なんてわからない。自分が何を喋っているかもわからなかった。
「それにしても、暑くない?」
寺内は再び口を開く。
「ああ、暑いな」
僕は答える。
「そうか。よかった」
「そうか」
「もしかしたら暑いのは俺だけなのかも、なんてことは思ってないけど、仮に俺だけが暑かろうがお前もみんな暑かろうが、別にどっちだっていいけど、あれ、じゃあなんで俺はそんな確認をしたんだっけ」
「じゃあ、喋りたかったんだろう
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