*浮き島/チグトセ
ろうさ、きっと」
僕は、喋った。
真っ白なミルクをどうにかかき回す。ぶらぶら垂れた足下を見る。沈丁花が花壇らしき場所でゆらゆら揺れている。サラリーマンが寝返りを打った。シノの、真っ白なスカートが扇子のように広がってばさばさはためくのが見えた。寺内が言った。
「例えばだよ、この世には俺とお前しかいないんだ。そうだな……緑の生い茂ったサバンナにいる。それで、象を一匹飼ってる。他には、誰もいない。誰もいないんだ。とにかく誰もいない。家族も、誰もいないんだよ。死んだのかもしれない。いなくなったのかもしれない。いや、そうではなくて世界が丸ごと死んだんだ。だから、死んだのは俺たちのほうなのかも分
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