我が家のピエロ/加藤泰清
奴はわざとらしくどこからともなく手鏡をとりだし口を大きく開け自分の歯を見つめている。きこえないふりをしている(親知らず親知らずと呟いている)。彼の両脚は卓上の上で、彼はぼくの今のつらさをしらない。水位はぼくの胸にまで届いている。しかたなくペットボトルの口を手でふさいだが水は止められても白いものは口と手の間から滑らかに糸をひいてこぼれ落ちる(もしくはぼくの手の中を通りぬけていく。ぼくの手の中の血と白いものが混ざりあい、同調して、励ましあっている、とても気持ちが悪い。その時ピエロもどきはぼくの方を一瞬のぞいたように見えた。奴の右手はぼくを油断なく狙っている)。奴が卓上でたたずむようにぼくも卓上にはいあ
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