ロンリーシンディとクイーン/田島オスカー
女と目が会った日のキスだけは
忘れられずに いた
偶然は偶然 だと思う
雨の降る日に 煙草の自販機の前で女と鉢合わせたのも
未成年の僕 と女の 吸う煙草の銘柄が同じだったのも
偶然だった 全くの偶然
そして 女が泣いたこと も
しかしそれは偶然とは呼びたくなかった
こんにちは、と女がか細く言ったので
僕もつられて あ、どうも、などと言ってしまった
こぼれる滴 歪む厚い唇
涙を拭う 白い指
ごめんなさい、いつも恥ずかしいところを見られてしまうものね、
君と、たまに隣にいるのはあれ、弟さん?ごめんねって伝えて、
君にはまだわからないかも知れないけれど、私淋し
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