チェス:初期設定の話/渕崎。
 
に。
きっと、彼女は今こうやって笑っているけども当時はかなりその言葉に衝撃を受けたのだろう。今の今まで鮮明に覚えているということは。

「わたしが悪いのか、と悩んだよ」
「……」
「何か彼女の気に障るようなことを無意識にしてしまっていたのかとね。ただの彼女の家庭内におけるトラブルから来る八つ当たりだったのかもしれないのだけど」
「そういう人間もいますよ」
「だろうな。彼女は常々自分の家庭の不満をわたしに漏らしていたから、きっと平和ボケした家庭で育ったわたしになら八つ当たってもいいと思ったのだろう。こちらとしてはいい迷惑だけど」

彼女が患っているのは木原と同系統の病
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