湖畔の洋館/はじめ
にいて 草をもくもぐと小さな口元を動かして食べていた 親子でここまでやって来たのだ 僕が草を千切って野兎達に投げてやると 野兎の親子はそれをもぐもぐと食べて 茂みの近くまで走っていき 一度此方に振り向いて 中へ入っていった 不思議な余韻がこの場に残っていた 僕はしばらくその感触を味わっていた 森では吸ってはいけないと分かりつつも煙草を吸った 霧と煙が肺の中へ勢いよく雪崩れ込んできて そしてゆっくりと顔を上げて吐いた ちゃんと携帯用の煙草の吸い殻入れに煙草を入れ 火を消してから立ち上がった 時刻は既に夕刻へ差し掛かっていた 僕は少し急ぎ足で歩き 時折幻想的で神秘的な色合いを見せる冷え冷えとした夕霧と
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