螺旋階段はもう夏なのさ/虹村 凌
 

どっちが吉祥天だかわかりゃしねぇ

真夜中のブックオフでついていけない二人の会話に
取り残されたように世界文学を手に取って
存在の不安なんぞを考えてみたけど
どうも今一しっくり来ないんだ

お前なんか
自転車の後ろの子供席に載せられて
遠くに行ってしまえばよかったんだ

嘘ばっかりだ
誰も嘘なんかついてないし
嘘かどうかを知る必要が無いから
嘘ばっかりになって
何だか疲れてしまったよ

二本目の煙草に火を付けてしまった
どうせ出てきやしない

一段目を昇る緊張感も
今じゃちっとも思い出せない
何時しか合鍵も回らなくなって
どうしちまったんだろう

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