佐々宝砂作「よもつしこめになるために」を読んで。/カスラ
 
体にとっての「約束の場所」であり、待ち合わせる相手と、それへの約束の誓いがあったことが明かされている。

従者である黄泉醜女ばかりではなく、元型(グレートマザー)としての“伊邪那美命”(イザナミ)は、大地の太母性の象徴であり、「誘う」の語源であると考えられている通り、その体内へ、さらに内へ内へと取り込みゆく負の母性である。それは民族や文化に関係なく、普遍的潜在意識に横たわる「元型」のひとつであるとされ、暗きもの、始源への回帰、言わばタナトスへの欲求で、死への憧憬を誘い、ときに畏怖され、忌み嫌うべき「穢れ」としての、洞窟や黄泉の国の暗い死として象徴される。そういった女性原理ともいえるものを「黄泉
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