さそりの火/鯨 勇魚
す
慈愛に触れてしまいました
いのちとは蛍石であり
各地からの出港は
厚い透明硝子
境界ごしに
ゆっくりと過ぎ去る
結晶それぞれは浮遊していました
薄く白むものは
私たちに触れることなく
融解してしまいます
人達の持ち合わせる鋭さを見せない
カレイドスコープの羅針盤
見つめた先を
揺らしているからそれらは
まるっきりこの世から
見ているのではないかのようです
遠くの海に沈んだ船
蒼天月との片割れが
隣り合わせて眠っていて
もうそおっと
もうそうっと
見守りたくて見守りたくて
その気持ちがそのままでいて
記憶の繋ぎ合わせは
不定調で繰
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