さそりの火/鯨 勇魚
 

生きてはいるからと呟いて
生きたまま
こんなにも遠くに来ました
という想いは
後悔ではありませんでした

流氷のたどり着く港
その先の海峡は狭く
この先にマールパシフィコと風は
平和の海と伝えられました

穏やか過ぎる海は
過ぎるほどに
隠されているようで
同じ方角を無口なまま
見つめ石英で傷をつける
この裏がわには酷い崖があり
海鳥が鳥取りに出合うことなく
羽ばたき生活をしている
自然体といわれても
それはそれでいて
こわいのです

見上げた南十字は冷たい
微笑みかけられた牧師の
言葉すら理解できないのだけれど
肩を叩かれた瞬間涙が溢れ出す
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