Mの肖像/んなこたーない
合いな印象を与えていた。
妹は母親に似て小柄だった。彼女はアル中患者で、施設の出入りをくり返しているという話だった。なんでも中学のときに神経を患い、その頃は食事のたびに毒が盛られているという妄想にとりつかれ毎回ひと暴れしていたという。男兄弟二人がかりでさえ、押さえつけるのには苦労したよ、とMが語ったことがある。あの華奢な身体に、いかつい男を二人もはねのけるだけ力があるとは思えなかった。
父親は別としても、Mの家族はその風貌とはまるで違って、みんなこちらがまごつくほどに丁寧な物腰の低い対応でぼくらを迎えてくれた。
Mは行動のひとだった。彼は他の仲間と同様に、知性や教養を一切持たなかっ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)