Mの肖像/んなこたーない
の電話をいつもの調子で聞き流すことにして、あとはひたすら自分の身体の熱と吐き気との格闘に精神を集中させたのだった。
Mと最後に会ったのはいつどこでだっただろう? 通夜の席上でぼくが考えていたのは主にそのことだった。すると、Sの着ているスーツが妙な光沢を持っていて、おかしいと誰かが言い出す。そうなると、Oのネクタイの締め方がおかしいとまた別の誰かが言いはじめる。普段にない形式ばった場所だから、気恥ずかしさと滑稽感が漂っていて、真面目に何かを考えようとすると、すぐ何かに妨げられてしまう。そこにはもちろん、一種不誠実なごまかしがあったとぼくは思う。なんにしろ、肝心なときこそ、どうでもいいことばか
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