Mの肖像/んなこたーない
 

 Yはかなりの早口でMの自殺を告げると一方的に電話を切った。ぼくは呆気にとられてしまった。が、しばらくすると合点がいった。というのも、その日は四月一日、エイプリールフールだったのだ。
 Yは当時二人の子持ちの女性と交際していて、一度深刻な顔をしてぼくに語ったことがある。女の元夫はいま刑務所にいる、不動産屋を営む父親がヤクザから死体運びを依頼されて、その身代わりで捕まったのだという。そいつは出所したら彼女とよりを戻したいと希望していて、あと一週間で刑期を終える。これからきっと面倒なことになる。ああ、おれはどうしたらいいんだ。
 Yはそのような嘘をよくつくのだった。
 それで、ぼくはその電
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