Mの肖像/んなこたーない
が、とにかくぼくはその噴水の縁の部分に腰掛けようとして、水中に転げ落ちてしまった。そしてそのまましばらく眠り込んでしまったらしい。気づいたときには、全身ずぶ濡れで、酔い覚めとはまた違う種類の悪寒に震え上がった。結局、ひどい風邪をひくはめになってしまった。
なので、ちょうどその日は仕事も休んで、一日中トイレに行く以外はベッドの中でうなされていた。Yから電話がかかってきたときも、一瞬出るのを躊躇った。しかしどうしても居留守を使う気にはなれない。これはぼくの性分である。彼女といるときに他の女性から電話がかかってきても、ぼくは平然と電話に出ることが出来る。というより、それが当然のことだと思っている。
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