現象でしかないひかり/水町綜助
美化だろうか
一年間という時間の上に
自分が寝そべっていた
夏ごろにのっぺりと溶け始めたそれは
時間のきめ細やかな肌にしみて
秋が来て冬が来て
寒くなって固まってしまった
春が来ても溶けなかった
夏が来ても
*
あぶら蝉が鳴いていた
じりじりとうるさかった
*
とある夜
環状線とは名ばかりの道路を
走っていた
町外れにまで車輪は転がり
信号は黄から赤へ
シフトダウンして
GS750Gってクソ重たい単車で
4、3、2、
がおんがおんがおんうう
じんじんしてる
じんじんときこえる
アイドリングよりうるさいよなんだ
蝉
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