【小説】読書/なかがわひろか
れない。外の景色は、ただ太陽が照り、風が穏やかで、春を証明しているにすぎない。彼女の読書について何かを言及するには、それらの景色はあまりにも日常を作り上げすぎていた。彼らには何も決断できない。
彼女は残りのページ数を確認する。薬指に小さなあかぎれがある右手でページをぱらぱらとめくる。ぱらぱらとめくられていくページたちは、何か必死に彼女を引き留めようと画策しているようだったが、そのスピードはあまりにも速すぎて、彼らにとってはあまりにも時間がなさ過ぎた。
彼女が確かめたページ数は絶望的に多かった。このまま続けて読むには、時間がかかりすぎる。また、彼女はその物語の結末がどうなるのか、
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