【小説】読書/なかがわひろか
な物語の続きを求めていた。
彼女はページをめくる。ページに書かれた文字たちは、我先にと彼女の瞳に入っていこうとするが、彼女はあくまで冷静に、それらを整列させ、ひとまとめの言葉にして頭の中に刻み込んでいく。ひねくれた難解な表現のところは、何度か読み返す。それは彼女の瞳をとどめておくためのこの世にある唯一の手段の様に思えた。
三十分ほど経って、彼女は本から目を離す。その瞳には多少の落胆があるように思える。思っていたほどその本は劇的な物語を歩むことができなかったようだ。彼女は少し迷うように、そして誰かに助けを求めるように、周りの景色に目をやる。だが、この決断は彼女自身にしか決められな
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