【小説】読書/なかがわひろか
手放す。彼女はそれらの人工的な音が示す行動でどうしても彼女が対応しなければならないものに対して、的確に対応していく。しかし、彼女の頭の中には今まで束ねて来た言葉をつなぎ合わせ、一つの壮大な(彼女は読書をする際に、いつも壮大な物語を選んだ)物語を作り出していた。新聞の集金屋さんと軽い会話をするときも、それは中断されることはなく、彼女の脳の片隅に絶えず浮遊している。
読書に戻った彼女は、さっきと同じ体勢を探していたが、全く同じにはならないことに多少不満を覚えた。それでも彼女は次の言葉たちを求めていた。さっきとは少し読みにくい体勢になってしまっていたが、彼女はそれを了承した。それよりも壮大な物
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