*波止場ポート/チグトセ
 
だったが皆までは言うまい。
僕たちは敷いていたマットの耳を持つと、のろのろとそれを、すぐそこの体育館倉庫まで運んだ。立派な私立高校の立派な体育館のくせに、扉の一つに鍵がついていないのを椎が知っていたのは椎がそこの生徒だからで、椎は万が一(マットを運び出すのを)警備員に見つかってもわたしが制服を着ている限り大丈夫、と言っていたがやはり見つかっていたら大丈夫ではなかっただろう。これまた鍵の壊れた体育館倉庫の扉を開け、そこまではずいぶんと慎重に、静かに行ったのに、最後の最後でマットを放り投げどがしゃーんと、派手な音を立てて中にあったいろんなものをなぎ倒した。二人で顔を見合わせ、次の瞬間全力疾走、元居た
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